治療的アセスメントが大事にしていること

 

治療的アセスメントはどのようにして治療的な変化を生み出すのでしょうか。

ここでは、少し硬い文章になってしまいますが、その理論的な背景をご紹介したいと思います。

 

Finn and Tonsager (1997) によれば、

治療的アセスメントが有効な方法になるのは、

1)相談者自身が、自分に対するとらえ方を

特定の視点を確認すること,2)自分自身についての新しい情報と自己効力感の向上を与えること,3)クライエントが理解され受けとめられたと感じること,により支援となることを理論化しました。 Finn (2008) は,すべての人は見守られ,理解され,そして受けいれられたいという基本的な欲求があるという近年の知見を強調し,治療的アセスメントはそのような欲求と合致するので治療的にはたらくのだと仮定しています。Finn (2007)は治療的アセスメントによって,クライエントが以前より一貫した,正確で,思いやりがあり,そして役に立つ,自分と世界についての"物語"を成長させることができるようになるという仮説を持っています。そしてクライエントに獲得されたこの新しい"視点"により,クライエントが新しい"行動"を試すことができるようになると考えています。同様に,Tharinger, Finn, Hersh, Wilkinson, Christopher, and Tran (2008) は,アセスメントにやってくる多くの親が,子どもについて不完全あるいは不正確な理解をしていることを記述しました。臨床家は治療的アセスメント,特に心理検査からの洞察を用いて,親が子どもを理解し,より共感的になるための支援を行います。進行中の研究では,どのようにして,そしてなぜ治療的アセスメントがクライエントに肯定的な変化を生み出すのかということについて,これまで述べてきたような仮説やその他の仮説について,検証を進めています。

 

 

 

治療的アセスメントの中心的な価値観について

 

協働(Collaboration)

 

治療的アセスメントを実践する心理士は,アセスメントが一番役に立ち,その結果が最も正確に理解されるのは,クライエントが真の協力者として関わってくれた時であると信じています。そしてそのことは,エビデンスによっても裏付けられています。クライエントはアセスメントの目標を定めるのを助け,関連した背景情報を集めるための支援をし,テスト結果の意味について彼らの考えを述べ,現実の人生における具体的なエピソードと結びつけることでアセスメントの妥当性を検証してくれます。クライエントはまた,アセスメント結果についてのあらゆる文書について,推奨,レビュー,そしてコメントするのです。

 

査定者はまた,クライエントを紹介してくれた専門家,そしてもしそれがふさわしい時には,クライエントの生活における重要な人々,例えば家族,医師,心理療法士,教師,裁判官,そして雇用者などと協働しながらすすめていきます。

 

敬意(respect)

 

治療的アセスメントの手続きは,クライエントへの敬意,そして査定者はクライエントがそのように扱われたいと思うように,クライエントを扱うべきだという信念に基づいています。したがって,治療的アセスメントを実践する査定者は,注意深くアセスメントの手続きについて説明し,クライエントが参加するかどうか説明に基づく選択ができるように支援します。そして,これから進んでいくアセスメントへしっかり取り組んでくれるよう依頼し,アセスメントの最後に「次の段階」を一緒にデザインできるよう,巻き込んでいきます。クライエントは,査定者とともに仕事をする「自分自身の専門家」と見なされ,毎日の生活の中で感じていたジレンマ,そして身動きが出来なくなっていた葛藤についてより理解していくのです。

 

治療的アセスメントはまた,様々な文化的背景を持つクライエントにも適しています。アセスメントの手続きはそれぞれ特定の文化に合わせて調整されます。加えて,査定者はテスト得点の読み方について,限定され決まりきった仮説を用いることはありません。クライエントは査定者が,アセスメントからの知見をクライエントが生きてきた文化的背景にあわせて適切に理解できるよう,手助けをすることになります。

 

慎み(Humility)

 

治療的アセスメントを実践する査定者は,クライエントと関わる際に,自分自身にも独自の視点と偏りがあること,そして他者のこころの内側を完全に理解することは不可能であることを,現実として理解しています。また心理検査の限界に関する知識も持っており,クライエントについて絶対的に正しい「真実」を伝えることなどできないことをよく理解しています。テスト得点とその解釈は,クライエントの生活を話し合う出発地点であり,クライエントが新しい選択を発見するための,手助けになるような仮説をまとめる道具であると見なされます。

 

治療的アセスメントの査定者は,クライエントが経験している困難を「査定者自身の体験としてとらえる(find their own version)」ように訓練されています。私たちは,Harry Stack Sullivanの「私たちはみなとても単純に,人間以外の何者でもないのです」という至言を忘れることはありません。私たちはまた,クライエントがどれだけ多く鏡に映った自分自身の姿に苦しんでいるか,胸を打たれます。そしてすべての人が成長し,人間としてのあり方に苦しみ,多くの場合,与えられた背景と資源の中で最善を尽くそうとしていることを感じています。

 

思いやり(Compassion)

 

I治療的アセスメントにおいて査定者は,共感と心理検査を,クライエントの生活を「肌で感じる(feel into)」ために用い,他の人からは理解されにくい,こんがらがった状況,行動,パターンを理解しようとします。このことはしばしば,クライエントが自分自身により思いやりを持ち,重要な他者からの受容と支援を受ける結果につながります。本当によくあることなのですが,思いやりが増し,恥の感情が減るに連れ,クライエントはそれまで得ることができなかった,自分自身で自分の人生を変化させられるという実感を持てるようになるのです。

 

開放性と探求心

 

治療的アセスメントを実践する査定者は,各々のアセスメントを,自分自身と世界,そして困難な状況に適応しようとする人間の素晴らしい可能性を秘めた,開かれた学びにしたいとこころから望んでいます。私たちはアセスメントを求める一人ひとり対して純粋な探求心を持っており,しばしばその探求心によって,クライエントが自分自身と人生の環境について新しい視点で見つめ直すことを発見します。

 

私たちは治療的アセスメントの潜在的な可能性が未だ発展途上にあることを認識しています。クライエントのみなさんからの,治療的アセスメントの方法を向上させ,その概念をより洗練させるための教えを,開放性そして探求心と共に待っています。

ACTA Asian-Pacific Center for Therapeutic Assessment since 2014

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